なぜ急ぐ大飯原発の再稼働~上~ 耐震バックチェック採り入れぬ不思議

官僚たちは“我々の決定に瑕疵はない”といわんばかりだった。=15日、参院会館。写真:筆者撮影=

官僚たちは“我々の決定に瑕疵はない”といわんばかりだった。=15日、参院会館。写真:筆者撮影=


 昨日は勝俣・東電会長、きょうは政府の役人。原子力発電に関わる人物は、どうしてかくも無責任なのかと感ぜざるを得ない。15日、環境団体が大飯原発の再稼働をめぐる政府の見解を質した。  

 場所は前日、国会事故調で勝俣会長の参考人聴取が行われたのと同じ参院議員会館の講堂である。政府からは原子力安全・保安院、資源エネルギー庁、科学技術庁の6人が出席した。

 国民の誰もが首を傾げるのが、「なぜ野田政権は大飯原発の再稼働を急ぐのか?」だ。

 環境団体からは「大飯原発3・4号機は審査指針が事実上存在しない状態で再稼働させることになるのか?」との質問が出た。

 資源エネルギー庁の松田明恭氏は次のように答えた。「まだ規制庁が発足していないので、これまでの安全基準で審査する」「行政の空白を作ってはならないので4大臣会議で取りまとめた安全基準(※)で審査する」

 200人近い市民が会場を埋めていたが、「行政の空白を悪用しているだけじゃないか」と怒号が飛んだ。官僚の入れ知恵で野田政権が急ごしらえした『安全基準』が混乱を招いているのである。これは序の口であった。

 エネ庁の松田氏は再稼働を急いでいるわけではないということを示したかったのか。「この1年間で積み重ねられた知見から…」と強弁した。

 社民党の福島瑞穂党首がすかさず突っ込んだ。
「バックチェックは、福島第一原発が予想を超える地震強度に見舞われた知見に基づいて設けられたものなのに、なぜ耐震バックチェックを採り入れていないのか?」

 原子力安全・保安院の御田俊一郎氏の答えには驚かざるを得なかった。「バックチェックは再稼働の要件にしていない」というのである。

 「大飯だけなぜ切り離すのか?」。環境団体が質問すると御田氏は「バックチェックは再稼働とは関係ないと思っている」と言い切った。

 福島事故の教訓とは何だったのか。安全軽視にも程がある。政府のずさんな対応には嘆息せざるを得ない。

 ~つづく~

原子力発電所の再起動にあたっての安全性に関する判断基準
経産省HP「事象進展と判断基準」より

基準1
全電源を喪失しても事態の悪化を防ぐ安全対策の実施

基準2
今回の事故並みに、想定値を超えた地震・津波に襲われても、燃料損傷に至らないことの確認

基準3
事業者による
・更なる安全向上策の期限付き実施計画
・規制への迅速な対応
・主的な安全確保の姿勢

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