国連「リオ+20」の開催をひかえ、リオ市内で有名なフラメンゴビーチでは、世界最大規模の市民サミット(Cúpula dos povos)が今月15日から開催されている。
木々が生い茂る広々とした会場には、100張りを優に超すテントが並び、各国から招かれた有名な活動家のスピーチや環境問題などのディスカッションが盛んに行われている。
テーマは、環境問題に限らない。資本主義、階級差別、人種差別などにも疑問を投げかけている。世界中の小さな闘いを集約させ、政治的な力にしようという狙いがあるようだ。
「核反対テント」を訪ねた。テントの中には、世界中で核の被害に遭った人々の写真が所狭しと展示されている。原発、ウラン鉱山などの問題についてのプログラムも盛りだくさんだ。
現在ブラジルにはリオデジャネイロ(Rio de Janeiro)近くの海岸の町アングラドスレイス(Angra dos Reis)に同国唯一の原子力発電所がある(地名にちなみアングラ原発と呼ぶ)。2基の加圧水型原発が稼働している。
2030年までに4~8基の原発を建設する計画が立てられていたが、福島の事故を受けて、「ブラジル政府は原発の新規建設計画を当面中止する」と報道された。しかし、テントの主催者の一人、シコ・ワイタカさん(80歳)によれば、現状は甘くないようだ―
「福島原発事故後、ブラジルでも反原発活動が盛んになった。若い人を中心に広がっており、今年の3月11日には10都市で反原発デモを行った。しかし、政府はアングラ原発の3基目の建設に躍起になっている。現在署名を集めており目標数の15万筆に達したら、政府へ建設中止の要請にいく。アングラ3号の建設にはドイツが関わっており、ドイツの資金提供が建設の鍵になっている」。
自国で脱原発を決めたドイツが他国で原発推進をしているというのだ。原子力マフィアの強欲さには、呆れるほかない。
「ドイツ国内での批判が高まれば、ドイツは資金提供できなくなる。反原発世論を高めることが大事」。テント内ではこんな意見が活発に交わされた。
展示の福島事故の写真を見ていた女性(物理学者)が熱いまなざしで語った―
「実際に写真をみて衝撃を受けた。原発反対の声が強まっている。スリーマイルの時、チェルノブイリの時もほとんどが原発反対だった。しかし2、3年で忘れてしまった。福島の現状については、きちんとした情報をみんな知らない。核についての危険性を、専門家と学者が一緒に声を上げなければいけない」。
「核反対テント」では、夜遅くまで、世界各国の老若男女が皆真剣にそれぞれの考えを交換し合っていた。その声をかき消さんとばかりに、別のテントでは熱いライブが。
しかしそんな事を気にしているのは筆者だけのようだ。おおらかな国民性のブラジルならばこそのピープルズサミット。肌の色も言語も違う人々が、夜の更けるのも忘れて語り明かした。
~つづく~
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諏訪記者は当方が一部旅費を補助したのみで、自費によりブラジルに行っております