東電株主総会 企業再生求める東京都の株主提案否決する居直り

事故当時、福島で畑を耕していた浅田正文さんは東電の株主だ。「被害者の立場に立って補償しろ」と提案する。=27日朝9時、代々木。写真:田中撮影=

事故当時、福島で畑を耕していた浅田正文さんは東電の株主だ。「被害者の立場に立って補償しろ」と提案する。=27日朝9時、代々木。写真:田中撮影=

 きのうは政府が提出した消費税率引上げ法案の衆院採決、きょうは東京電力の株主総会。本来の役目を忘れ、国民の生血を啜りながら生き長らえる醜悪な組織のありさまを、国民は連日見せつけられた。

 東電の筆頭株主である東京都の猪瀬直樹副知事が株主提案をした。猪瀬副知事の指摘からは、東電と政府の病状があまりにも似通っていることがうかがえる。

 猪瀬氏は具体的な株主提案に入る前に「東京都は年間500億円の電気料金を払う大口ユーザー・・・(中略)新生東電が信頼を取り戻すためには経営の透明性や説明責任を果たすことが重要である」と述べた。

 『政府は重い税金を払っている国民に対して事業内容や予算の使途を説明しなければならない』―こう置き換えることもできる。

 以下、東京都の株主提案―――

▼「競争原理を導入し低廉で安定した電力を供給し、顧客サ―ビス第一を使命とする」と経営理念に盛り込む。ところが東電は不動産売買、宿泊施設、労働者派遣事業、損保事業など電力事業と関係ない資産や会社がたくさんある。(東京都の調べでは128社。東電幹部や社員が天下る。)これらは売却すべきだ。

 政府も星の数ほど天下り団体を持つ。都内の一等地に土地や官舎を持つ。

▼「電気料金の情報開示」。第三者の検証が可能なように経営の透明性を確保することを定款に定める。

 りそな銀行は公的資金が入って、ボーナスが4回出なかった。JALは3回出なかった。東電はこの夏1回だけ。

 政府に情報開示請求を出しても黒塗りの文書しか返ってこないことが多い。(高額な電気料金)税金で賄われる公務員の給与は民間の大企業を上回る。

▼「設備投資に競争原理を導入すべし」。電力会社は膨大な設備を必要とする。
だが随契や限られた業者のみの参入が常態化している。国際標準品の使用で入札を行うなどしてコスト削減を行うべき。

 随契やファミリー企業だけが参入する特殊法人の事業と酷似している。

▼民間事業者を活用した老朽火力(発電所)のリプレイスメント。

株主総会の会場は1万人以上収容可能な巨大体育館。=国立競技場体育館、写真:田中撮影=

株主総会の会場は1万人以上収容可能な巨大体育館。=国立競技場体育館、写真:田中撮影=

 自・民政権を操ってきたのは電事連と電力総連だ。政府の役人は電力会社や関連団体に高額の報酬で天下る。鉄のトライアングルがそこにある。政府と電力会社の体質が似通うのも無理はない。おこぼれに預かるのが記者クラブだ。原資は国民が払う世界一高い電気代である。

 東京都の株主提案はすべて反対多数で否決された。東京電力は福島の事故を起こしていながら信頼の回復につとめようという気はないようだ。

 いとも簡単に有権者を欺く政権と事故の責任を満足に取らない東電。両者に共通するのは「国民から搾り取ればよい」だ。

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