「細野出て来い」 原子力規制委員会人事に怒り渦巻く

原子力規制委員会人事の白紙撤回を求めて市民たちが環境省に押し寄せた。=3日午後9時半頃、霞が関。写真:田中撮影=

原子力規制委員会人事の白紙撤回を求めて市民たちが環境省に押し寄せた。=3日午後9時半頃、霞が関。写真:田中撮影=

 午後6時首相官邸前。国民的行事ともなった金曜集会は、「(原子力規制委員会の)人事案反対」「田中(俊一)は辞めろ」のシュプレヒコールで幕を開けた。

 原子力推進の中核にいた田中俊一・元原子力学会会長を委員長とする原子力規制委員会の政府人事案は来週にも採決されそうだ。3日、危機感を募らせて官邸前に集まった市民たちの第一声は、いつものような「再稼働反対」「大飯を止めろ」ではなかった。

 官邸前の歩道は人事案に反対するプラカードだらけだ。田中俊一氏は否定的な意味で今、最も注目を浴びる人物と言ってよい。

 「この中(会場)であの人事に賛成する人なんているの?」。『命を守れ』と書かれた横断幕を手にした福島県二本松市出身の女性は、呆れたような表情で筆者に逆質問してきた。

 「いないでしょうね」と答えると、傍で警備にあたっていた制服警察官までもが「いる訳ないじゃないですか」。集会を規制する側の警察官までもが、参加者同様に原子力規制委員会の人事はおかしいと思っているのである。

 ロンドン五輪がなければ、今頃は反対世論が沸騰していただろう。それでも国民の声に耳を傾けないのが民主党政権だ。

 最近、細野豪志環境相に会った国会議員は次のように語る。「細野さんは、田中俊一さんが福島で除染作業にあたったことをすごく評価している。他の人にあたったけど皆断られた。それでも田中さんは引き受けてくれたと言って有難がっている」。

 人事案の撤回を陳情するため、議員会館の各部屋を訪ねていた福島県郡山市在住の女性は、廊下で細野大臣にバッタリと会った。細野氏は「国会に提出しているので、このまま進めます」と表情ひとつ変えずに答えたそうだ。

都内在住の女性は委員会人事への怒りをキャンドルの灯りで静かに表した。=同日午後7時半頃、国会議事堂前。写真:諏訪撮影=

都内在住の女性は委員会人事への怒りをキャンドルの灯りで静かに表した。=同日午後7時半頃、国会議事堂前。写真:諏訪撮影=

 原子力規制委員会は環境省の外局である。細野環境相は同委員会人事に絶大な影響力を持つ。怒りの矛先は、細野環境相にも向けられた。

 参加者たちは官邸前、国会議事堂前での抗議行動を終え、その足で霞が関の環境省に向かった。仕事を終えて永田町に足を運び、2時間に渡り声をあげ続けた後である。夜の帳が降りても30℃を下らない蒸し暑さで体力は消耗しているはずだ。

 ところが怒りのエネルギーは衰えることを知らなかった。「細野出て来~い」「人事案を白紙撤回しろ」…抗議の声は地鳴りのように環境省が入る高層ビルに向かって響いた。

 懸命に声をあげる人々の中に福島から静岡に避難した女性(30代)がいた。女性は原発事故直後妊娠し、5ヵ月目に夫の生まれ故郷の静岡に移り住んだ。「生まれた子供の手足に指が5本ずつあるか?しっかり確認した」と当時を振り返る。

 「まさかと思うような人事案が可決しそうだ。福島には避難できない友人と両親がいて放射能と戦っている。それを無いことにするのが、今回の人事だ。憤りさえ感じる。細野さんが言ってた“福島の人に寄り添う”とは、これだったのか。そう思うと情けない」。女性は怒りに震えていた。

 この日は環境省のみならず、経産省、文科省、財務省前にも市民が集い抗議の声を挙げた。政府は面で包囲されつつある。四面楚歌が聞こえない野田首相もそろそろ脅威を感じつつあるのではないだろうか。

 《文・田中龍作 / 諏訪京》

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読者の皆様。先月は原発再稼働で大飯へ、オスプレイ搬入で岩国へと現地取材に出向いたため、出費がかさみました。『田中龍作ジャーナル』は読者のご支援により維持されています。

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