原発事業をめぐる不透明性は洋の東西を問わないようだ。14日の国民投票で建設の是非が問われるヴィサギナス原子力発電所の建設費は、リトアニア政府の見積もりで680億ユーロ(6900億円)となる。
だが核廃棄物の処理をどうするのかなどは未だ決まっていない。原発を動かせば必ず使用済み核燃料は出てくる。処理には六ヶ所村の事業が示すように原発本体の何倍もの費用がかかる。この先、いくら金がかかるのか?原発に反対する人々は合言葉のように「不透明性」を口にする。
旧市街地でインタビューした女性(映画プロモーター・32歳)は「リトアニアにエネルギーが必要なのは分かる」としながらも「計画が不透明」と話す。
原発は発電コストが安く電気代を抑えると見られがちだが、彼女は「上がるか下がるかも不透明」と不信感を隠さなかった。
国民投票に法的拘束力はない。大統領、首相とも原発推進派だが、議会構成は政策決定に大きな影響を及ぼす。「国民投票」と同じ14日に行われる国会議員選挙は原発の行方を左右する。
議会と選挙の事情に詳しい政府関係者は「原発賛成と反対はほぼ70対70(定数141)で互角」と見る。政府関係者は話を続ける――
「筋金入りの原発反対議員はわずか30人ほど。ところがニュートラルや原発賛成陣営から相当の数が反対に流れる。(理由は)議員たちは自分が担当する分野に予算(農業委員であれば農家に補助金)がつけば簡単に寝返るから」。
原発政策よりも自分の選挙が大事なのは、日本の議員と同じだ。大事故を経験してなおも、「自らの選挙が第一」という日本の政治家ほど酷くはないだろうが… ~つづく~
《文・田中龍作 / 諏訪都》
◇
リトアニア取材は関西の篤志家S様の多大なご支援の御蔭を持ちまして実現致しました。諏訪記者は自費で来ております。