原発建設の是非を問う国民投票が14日、リトアニアで行われる。原発は「日立GE製」だ。09年に議会が建設を承認したが、福島の事故を受け野党のリトアニア社会民主党が主導して国民投票にかけることになった。
原発推進政策が否決されたイタリアの国民投票のように法的拘束力はない。だが、同日には国会議員選挙も行われる。原発に反対する社会民主党を中心に連立政権を組む可能性も高く、予断を許さない状態となっている。
北海道の80%ほどの面積に人口318万の小国、リトアニア。ベラルーシ国境に近い西部にイグナリナ原発があり、2基の原子炉で300万kw発電していた(1987~2009)。運転開始当時としては世界最大級だった。だがチェルノブイリと同型の原発であったことから、ヨーロッパ諸国の懸念が強かった。
EU加盟の条件としてイグナリナ原発の運転停止をのまされ、リトアニア政府は1号機を2004年末、2号機を2009年末に止めた。現在はエネルギーの8割までをロシアに頼る。
リトアニアは二度までもロシア(旧ソ連)に武力併合された歴史を持つ。スターリン政権時には、20万人を超す人々がシベリアに強制連行された。
国民の意識を貫くのは「EU加盟を果たし西側の一員となった後までロシアには縛られたくない」だ。街頭インタビューでは原発賛成派、反対派問わず「ロシアの影響」を口にした。原発建設はロシアからの「独立」を意味するのである。
1人当たりのGDPが19,100ドル(=約150万円/2011年推計、CIAファクトブック)と貧しいリトアニア国民を悩ますのが、光熱費だ。
公立高校の常勤教師で月収は約8万円。一家4人の平均家庭で電気代は5~6千円、暖房代が2万円だ。光熱費が収入の3分の1以上を占める。冬は極寒の地となるリトアニアで暖房は生活に欠かせない。10月中旬の今でも夜はヒーターなしだと凍える。
もしロシアにエネルギー供給を止められた場合、値がかさむ中東の石油に依存するだけの経済力は、リトアニアにはない。どうしても原発に傾斜しがちになる。それでも直近の世論調査では55対45で「原発反対」が若干上回った。 ~つづく~
《文・田中龍作 / 諏訪都》
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