原発事故 密室で進む補償の枠組み

原子力損害賠償紛争審査会。福島県出身女性の猛抗議が実り筆者は撮影できた。(15日、文部科学省。写真:筆者撮影)

原子力損害賠償紛争審査会。福島県出身女性の猛抗議が実り筆者は撮影できた。(15日、文部科学省。写真:筆者撮影)

 チェルノブイリと並び世界原子力史上最悪となった東京電力・福島原発事故。農漁業はじめ住民生活への損害賠償の補償金は数兆円にも上る可能性がある。

 補償の枠組みを決める原子力損害賠償紛争審査会の第1回会合が15日、開かれた。大方の予想通り密室でコソコソと進められていた。

 まず委員10人の人選は誰がいつ、いかなる理由で決めたのか分からない。中には御用学者と言われるセンセイもいる。

 事務局は文科省が務める。文科省は「エコでクリーンな原発」を呼びかけるポスターコンクールを開き小学生を洗脳していた役所である。

 「紛争審査会が15日に開かれる」と告知されたのが2日前のことだ。しかも傍聴席は50席しかない。筆者は同日開かれた枝野官房長官の記者会見で「こんな大事なことを密室で決めるのか?」と質した。

 枝野官房長官は「被災者のためにも早く開かなければならなかった。開催の直接の権限は文部省が持つ」と説明した。

 傍聴席は記者クラブが中心を占め、次に証券会社、ファイナンス会社、東電などが並んだ。たまたま抽選にあたった善良な市民は極々わずかだ。

 証券会社が出席しているのは、どれだけの補償を東電が負うかによって株価に影響するためだ。ファイナンス会社には米ハゲタカも含まれていると指摘する元政府関係者もいる。東電の死臭を嗅ぎつけているのだろうか。

 そこには被災者の生活再建を考える視点はない。事故原因がそうであったが、補償もまたカネ儲けが最優先だ。

 紛争審査会の会場となった文部科学省のロビーでは福島県出身の女性が「福島県民を傍聴させないのはおかしい」として抗議し、一時騒然となった。

 
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田中龍作の取材は読者に支えられています。

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