民主党がマニフェストに掲げていた郵政事業の抜本見直しの根幹となる「日本郵政株式売却凍結法案」の採決を26日以降に延期したのは、政界再編を目論む小沢一郎幹事長の深謀遠慮であることが、政府関係者の話で明らかになった。
法案への賛否をめぐって自民党を引き裂くのが狙いだ。
「郵政解散」とも名づけられた05年の総選挙では、小泉首相(当時)が血道をあげた「郵政民営化法案」に反対した自民党衆院議員が党を追われ、野田聖子氏ら「命からがら」選挙で勝ち残った11人が07年に復党した(平沼赳夫氏は復党せず)。
このうち9人は今夏の総選挙でも議席を維持した(うち4人は比例復活)。小泉首相が「反対すれば公認しない」と“脅迫”した郵政民営化法案に「よくぞ反対してくれた」という「ご恩返し」で、全国郵便局長会など郵政関係者が支持したことが、勝因のひとつだった。
地域の顔役でもある郵便局長で組織する「全国郵便局長会」は大集票マシーンで、民主党の総選挙での勝利にも一役買った。
「日本郵政株式売却凍結法案」の実現は、民主党と全国郵便局長会をつなぐ大きな絆であり、同局長会の悲願でもある。民主党が今国会の最重要法案に位置づけているのはこのためである。
自民党は民主党への対抗上、法案に反対の立場を取る。だが、採決となると困るのが野田聖子氏ら「郵政造反復党組」だ。党の方針に逆うことには「郵政解散」のトラウマがある。だからと言って「反対」すれば、次の選挙から郵便局長会からの票は来なくなる。
パーティーで郵便局長会の幹部から「もし法案に反対したら次から応援しません」と釘を刺された復党議員もいるほどだ。復党組に限らず自民党の中には、長年のよしみで局長会から票を流してもらっている議員も少なからずいる。
法案に反対か賛成かの立場を鮮明にしなければならない通常の採決は避けてもらいたい、というのが復党組の切なる願いだ。郵便局長会から票を流してもらっている自民党議員も同様の思いだろう。
自民党内には一方で政権交代前まで進められていた郵政民営化を強く支持する勢力も厳然としてある。通常採決となれば、党内がギクシャクするのは目に見えているのだ。
実際のところ、自民党は民主党が強行採決してくれることを望んでいるのである。自民党議員全員が本会議を欠席できるからだ。ここを見透かしたのが民主党の小沢幹事長だ。
自民党がざわつく通常採決に何とか持ち込めば、復党組の再離党もある。また大義名分と選挙区調整さえつけば、民主党に鞍替えしたがっている自民議員もいて、片手では数えきれない。首尾よく行けば10人近い議員の離党もありうる―ー「小沢幹事長の描くベストのシナリオ」を前出の政府関係者はこう解説した。
最大野党の自民党が割れれば、政界再編の引き金となる。「いつでも政権交代が可能な真の2大政党制を」が、小沢氏の口ぐせだ。離合集散の組み合わせに興味が湧く。
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