経産省の巨大ビルの真下にちょこんと立つ小さなテント。そのコントラストは、国家をも支配下に置く原子力村と国民との関係を思わせる。
テントは『改憲阻止9条の会』が9月11日に立てた。「脱原発・反原発」を唱える市民、環境団体、平和団体の人々が入れ替わり立ち替わりしながら詰める。これまでにのべ720人が座ったり泊まったりした。
テントをめぐっては、経産省と『9条の会』との間で緊張関係が発生している。テントが立っている場所が経産省の敷地の中(国有地)だからだ。
毎朝、判で押したように経産省の職員がやってきて、テントの“住民”に告げる。「ここは違法占拠です。ただちに立ち退いて下さい」。
主催者の『9条の会』は13日付けで同省厚生企画室に国有地の「使用許可申請」を提出した。厚生企画室は筆者の電話取材に「『許可』するか『不許可』とするか現在検討中である」と答えた。「許可した場合には、路線価に基づいた地代を取る」とも。
場所は天下の一等地だ。途方もない地代を請求されるだろう。それでも主催者の一人、渕上太郎さんはめげない。「(テントは)原発推進、再稼働の本丸である経産省のノド元に刺さったトゲだ。みんなでトゲを大きくして反原発の砦にしたい」。
テントが建ってまだ20日足らずだが、「脱・反原発」のメッカともなりつつある。野田首相を追って渡米し、ニューヨークの国連本部前で福島の実情を訴えた母親たちは、テント前で記者会見をした。福島に汚染されていない水と野菜を運ぶボランティアの集合場所にもなっている。
「脱・反原発」の交流拠点でもある。公安警察にとっては監視の対象となる。私服刑事が毎日のように訪れ「きょうは何人くらい来ている?」と訊く。渕上さんは「デカ(刑事)ともすっかり顔見知りになっちゃったよ」と苦笑いを浮かべた。
不許可とした場合、経産省は警察を動員して当然のごとくテントの立ち退きを迫るのだろうか。原発立地地域で住民を蹴散らしたがごとく。