総裁選前倒し求め、反麻生勢力が署名提出

 中川秀直元自民党幹事長をはじめとする反麻生勢力は16日午前、両院議員総会の開会に必要な128人を超える国会議員の署名を細田幹事長に提出した。開かれることになれば総裁選の前倒しが決まる可能性も高い。麻生首相が宣言した「21日衆院解散、来月30日投票」の日程は不透明になってきた。

 ただ麻生首相をはじめとする執行部は両院議員総会の開会に否定的とされ、反麻生勢力とのギリギリの攻防が展開されるものとみられる。

 署名集めの中心になった中川秀直、武部勤元幹事長らは自分の選挙が危ない。署名した議員のほとんどは同様の事情を抱える。

 麻生首相を引きずり降ろしても「表紙を変えるだけ」との見方がある。だが当落ボーダー上、あるいはボーダーに近い議員は、不人気極まる麻生首相が変わるだけでも自民党支持率が高まり、比例で復活できるものと考える。「溺れるものはワラをもつかむ」の心境だ。

 選挙区を与えられない小泉チルドレンの20人は比例で当選するしかない。党総裁の人気・不人気は得票にダイレクトに響く。「麻生おろし」に動くのは当然の議員心理だろう。

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自民党本部(永田町)

 中川氏らは都内のホテルを根城に署名集めの工作を続けていた。両院議員総会の開会に必要な128人を超えるか微妙だったが、与謝野馨財務相の動きが大きく前に進めた。 与謝野馨財務相は15日、総理官邸を訪れ「あなたでは選挙を戦えない」という趣旨の意見を述べ、事実上の退陣勧告を突きつけたのである。グループの議員10人と共に署名にも名を添えた。署名議員は133人にのぼった。

 与謝野氏の危機感を決定的にしたのは、東京都議選での自民党の歴史的大敗だ。自らの選挙(衆院・東京1区)を支えてくれていた元都議会議長の内田茂氏の落選は、与謝野氏にとって衝撃的だった。選挙ベタで知られる与謝野氏は「自分の選挙はどうなるんだ」と浮き足だった。

 にもかかわらず麻生首相は「国政と地方選挙は関係ない」などとうそぶく。与謝野氏の憤懣は沸点に達していたに違いない。

 筆者は本誌『田中龍作ジャーナル』(7月13日付)の「古参後援会員も見放し自民大敗、与謝野財務相『城代家老』失う」で、与謝野氏が率先して麻生首相に引導を渡すこともありうると予言したが、その通りの展開になった。

 12日に行われた都議選は前回より10ポイント以上も高い投票率(54・49%)であった。有権者の一票が麻生政権を追い込んだとも言える。

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