明治乳業の粉ミルク「ステップ」から放射性物質セシウムが検出されたことは、子を持つ母親たちに衝撃を与えた。
事故を起こしたチェルノブイリ原発から放射性物質が飛来していたポーランドでは、政府が国内産牛乳の使用を禁止して輸入粉ミルクに切り替えた。このため原発事故由来と見られるガンの発生はほとんどなかった、とされている。だが、今回のセシウム混入事故により、粉ミルクに対する“ある種の安心感”は根底から覆されてしまったのである。
お茶、米、牛肉、そして粉ミルク…食品の放射能汚染がとまらない。これでは食の安全が保てないとして、川田龍平議員(みんな)、阿部知子議員(社民)、馳浩議員(自民)が超党派で小宮山洋子厚労相に「食品全品目の放射能測定を実施するよう」要請した。
「森永ヒ素ミルク中毒事件」(1955年発生)は、工場での製造過程で工業用ヒ素が混入したもので、あくまでもメーカー側の過失だ。だが、今回次から次へと放射能汚染された食品が見つかるのは、行政の対応の遅れである。
明治粉ミルクへのセシウム混入は、二本松市のNPOによる測定で判明したものだ。行政による検査ではなかった。
阿部知子議員は8月3日、衆院厚労委員会で「ミルクは大丈夫か?」と政府を質した。その後一度、粉ミルクの放射能測定が実施されただけだった。
「継続してしかも抜き打ちで検査しなければならない。食品全品目、全量、(放射能)測定しなければ国民は安心できない」。阿部議員は政府の迅速かつ本格的な取り組みを求めている。
だが厚労省や消費者庁の対応は鈍い。この国の食の安全はNPOによって守られているのだろうか。測定機材は高価なためNPOが持つわずかな台数では測定できる量は限られているのだ。こうしている間にも、国民は放射能汚染された食品を摂取しているのかもしれない。