師走に入っても脱原発デモが全国各地で続く。東電福島・第一原発事故の収束は見えず、放射能への恐怖を抱えたまま人々は年を越すことになる。
11日、原発を持つ電力会社8社(東電以外は東京支社)すべてに抗議するデモ(参加者約1,000人)を取材した。地震が多発する狭い国土に54基もの原発がひしめき、いつまた原発事故が起きてもおかしくないようなズサンな安全管理だ。
奈良県出身の女性(40代)は「ストップ 日本丸ごと無理心中」のプラカードを掲げて参加した。「関西電力が福井県に置く原発で事故が起きれば『近畿の水がめ』といわれる琵琶湖が放射能汚染される」と首を横に振りながら話す。
彼女と同じ危機感を抱き、滋賀県から新幹線で駆け付けた男性(40代・公務員)もいる。大津市では市民グループが市議会に「関電原発の停止」「学校給食に用いる食材の放射能測定」を請願している、という。
都内の女性(40代・会社員)は、集合場所の日比谷公園にカラーマーカーとダンボールを持ち込み、「原発を輸出するな」と書いたプラカードを作った。9日、国会で承認されたベトナムやヨルダンへの原発輸出に抗議するものだ。
「日本で事故を起こした物を世界に持って行くなんてふざけている」。女性は語気も荒く語った。
「ゲンパチュ、いらない」。両親に連れられた幼い女の子(5歳)が、たどたどしいシュプレヒコールをあげている。母親(神奈川県在住)は「『原発』なんて言葉を、覚えてほしくないんですけどね」と眉をしかめた。
放射性物質に汚染された汚水を海に垂れ流し、安全とは言えない原発を海外に輸出する。「ゲンパチュ」という言葉が世界の子供たちの間で流行ったりはしないだろうか。寒々とした気持ちになったのは、師走のせいではなかった。