「陸山会事件の強制起訴はデッチあげ」 市民団体が特捜部を刑事告発

告発状を提出した後、記者会見する「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」メンバー。=12日、司法記者クラブ(東京地裁内)。写真:中野博子撮影=

告発状を提出した後、記者会見する「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」メンバー。=12日、司法記者クラブ(東京地裁内)。写真:中野博子撮影=


 検察が目論んだ完全犯罪が音を立てて崩れ始めた。東京地検特捜部が陸山会事件の取り調べをめぐって仇敵小沢一郎・元民主党代表を強制起訴するために『検察審査会を悪用して違法な画策』をしたとして市民団体が12日、最高検に告発したのである。

 告発したのは弁護士、作家、学者・研究者などで組織する「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」(代表:八木啓代さん)。告発状によると特捜部の罪状は――

 1)検察官がゼネコン関係者を取り調べた結果「小沢議員に対して裏献金をしたことはない」という供述内容であった。検察当局はそうした供述調書を捜査記録(不起訴記録)として検察審査会に送付する必要があったのにもかかわらず、除外して送付した。これは偽計業務妨害罪(刑法第233条)にあたる。被告発人は未詳=特捜部の某氏ら。

 2)石川知裕衆院議員は「検事から『ヤクザの手下が親分を守るためウソをつくのと同じようなことをしたら選挙民を裏切ることになる』と言われて『小沢先生に虚偽記載を報告し了承を得た』」と供述したとされるが、その捜査報告書は田代政弘検事が捏造したもの。虚偽有印公文書作成罪(刑法第156条)、同行使罪(刑法第158条)にあたる。被告発人は田代政弘検事。

 何が何でも小沢氏を強制起訴に持ち込みたかった東京地検特捜部は、小沢氏に有利となるような供述調書は検察審査会に送付せず、有罪の心証を色濃くするような捜査報告書を捏造して送付したのである。

 検察審査会の審査員選定をめぐっては、インチキソフトの存在が指摘されている。審査員は社会経験の乏しい30歳台(平均年齢)になるようソフトに仕掛けがされていたというのである。

 さらに驚くべき事実がある。起訴すべきかどうかを議決する素人審査員に助言を与える審査補助員(弁護士)リストのトップは、検察審査会のあり方に疑問を呈していた弁護士だった。ところがこの弁護士は外され、小沢氏と敵対する政治家とのつながりが指摘される弁護士が審査補助員となったのである。

小沢氏の起訴議決を報せる貼り紙。=昨年10月4日、東京地裁前掲示板。写真:筆者撮影=

小沢氏の起訴議決を報せる貼り紙。=昨年10月4日、東京地裁前掲示板。写真:筆者撮影=


 要するに陸山会事件をめぐる検察審査会の強制起訴とは次のようものだったのである――

 ▲検察にとって目の敵である小沢元民主党代表に有利となるような供述調書は「検察審査会」に送付せず、▲有罪心証を刷り込めるような供述は捏造して「検察審査会」に送付する。▲「検察審査会」の審査員は社会的経験が乏しい若者が選ばれるよう選定ソフトに仕掛けが施されていて、▲素人審査員に助言を与える審査補助員(弁護士)は、強制起訴のあり方に疑問を呈する弁護士を外し、▲小沢氏と敵対関係にある政治家とのつながりを指摘される弁護士をあてる。

 今回の告発は弁護士グループが中心になって丹念に事件を調べあげた。それだけに検察審査会が、何が何でも小沢氏を強制起訴するような仕組みを作っていたことが手に取るように分かる。「検察が起訴できなくても、検察審査会が強制起訴する」―こう嘯(うそぶ)いた検察の捜査関係者もいたというから呆れる他ない。

 目障りな政治家は葬る。そのためにはデッチあげでも何でも手段を選ばない。法治国家の土台を検察・司法自らが崩しているのである。

 お身内の犯罪を最高検察庁が果たして処理できるだろうか?東京地検特捜部と田代政弘検事を最高検に刑事告発した「健全な法治国家のために声をあげる市民の会」代表の八木啓代さんは「検察の自浄能力に期待したい。これが正念場」と一縷の望みを託した。

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