市民団体が「全ての原発の停止と廃炉」などを求めて経産省原子力安全・保安院に請願に行ったところ、若手官僚から仰天発言が飛び出した。原発事故は収束していない、と口を滑らせたのである。
「すべての原発いますぐなくそう!全国会議」を中心とする一行12人は31日、経産省別館の原子力安全・保安院を訪れた。同会議事務局長の織田陽介さんが保安院広報課に苦労してアポを取っての訪問である。
約束通り同日午後2時、保安院の受付で面会の手続きを取ろうとしたところ、広報課に内線電話を入れた受付嬢は「担当者が変わったそうです」。オイオイ、5日前にアポ取ってんだぞ。傍らでやりとりを聞いていた筆者は保安院の非常識さに吹き出しそうになった。
『このまま門前払いされてなるか』。一行は受付嬢を通して広報課に猛然と抗議した。10分ほど押し問答が続いたところで警備担当の職員がおもむろにやってきた。
「あちらでお待ち頂けますか」。警備担当者は受付裏のソファーが並ぶスペースに一行を押し込んだ。電燈が一器も点いておらず真っ暗だ(写真)。別の警備担当職員に聞くと節電の一環らしい。
暗がりの中で20分間ほど待つと、先ほどの警備担当職員と共に広報課の役人が現れた。「原子力安全広報課・下鶴俊輔係長」だ。30歳になるかならないかのうら若き青年である。十中八九キャリアだ。
下鶴青年、もとい、下鶴係長は一行を同じフロアーのロビーに案内した。立ったまま請願を受け付けようというのである。
「どうして会議室じゃないの?」
「請願はロビーで受けるようにしている」
「(昨年)10月27日に『福島の女たち』が申し入れた時には会議室を取ってくれたわよ」、「請願権の制限になるよ」……一行は畳み掛けた。
下鶴係長は追い詰められた格好になった。「庁舎の警備上の都合もあり…」
「我々は別に危ないことしないよ。会議室に入れたからといって警備上何が問題なの?」
いよいよ困った下鶴係長は、つい本音をもらしてしまった。「(原発事故の)収束宣言は出しましたが、現場は収束に向かって動いてますんで…」。
「(事故を起こした)原発から白い煙が出てて、どうして収束と言えるんですか?」。福島の人々がよく口にする言葉だ。
原子力安全・保安院の若手官僚が、うっかりとはいえ原発事故が事実上収束していないことを認めたのである。「やはり、そうだったのか」と思わざるを得ない。野田首相に「当の保安院が収束していないって言ってますよ~」と言ってやりたい。