検察と検察審査会制度がもたらした混乱に終止符が打たれることはなかった。政治資金規正法違反の罪に問われ一審で無罪判決を受けた小沢一郎・元民主党代表を、検察官役の指定弁護士はきょう、控訴した。
3人の指定弁護士は東京地裁内の司法記者クラブで記者会見した。控訴を決めた理由について主任格の大室俊三弁護士は「一審判決に事実誤認があり、(二審で)修正可能だと判断したため」とした。「二審では主文(判決を)変えることができる」とも述べ、自信をのぞかせた。
大室弁護士は「(秘書と小沢氏との)共謀が認められないというのは証拠に照らしておかしい」と、一審の事実誤認について見解を示した。
「東京地検特捜部が虚偽報告書を検察審査会に送付し強制起訴させた陸山会事件は、起訴の有効性が疑われているのである。それをさらに控訴することは政治裁判となりはしないだろうか?」筆者は大室弁護士に質問した。
「政治裁判ではない」。大室氏は言い切った。
小沢氏は検察リークと記者クラブメディアの世論操作によって“真っ黒け”にされた感がある。
フリージャーナリストの江川紹子氏は「(控訴の決断にあたって)報道も勘案したか?」と質した。
「多くの人たちが、これだけ関心を持ってるんだと実感した」。大室弁護士は慎重に言葉を選びながらも答えた。
検察が自らに都合の悪い政治家に狙いを定め、虚実ないまぜにしてマスコミにリークすれば、誰でも被告人に仕立て上げることができる。2012年5月9日は、日本の司法制度と司法ジャーナリズムが暗黒であることを改めて示した日となった。
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