原発再稼働に抗議する『金曜集会』が官邸前から全国各地に飛び火している。ネット上で確認できただけでも北海道から鹿児島まで50ヶ所以上に上る。
『田中龍作ジャーナル』は永田町を飛び出し、各地で上がる「脱原発の狼煙」を取材することにした。第1回目は日本一危ないと言われる浜岡原発を抱える静岡。官邸前に呼応して始まった「再稼働反対アクション@静岡」は、10日で4回目を数える。
静岡は県土の3分の1が浜岡原発から30キロ圏内にすっぽりと入る。県民の危機感は強い。「原発再稼働の是非を住民の手で決める県民投票」では、法定数を3倍近く上回る17万8,240筆の署名が集まったほどだ。
静岡の金曜集会のボルテージは高い。官邸前とは一味違う雰囲気だ。9日夕、参加者たちは、プラカードや横断幕を手に、夜店で賑わう静岡市の繁華街を練り歩いた。
「浜岡原発再稼働、絶対反対」とプリントしたTシャツを掲げているのは、焼津市から足を運んだ漁師(30代)だ。「第5福竜丸事件への強い思いがある。行政の調査では(焼津沖の)海は汚染されていないが怖さはある。海を守りたい。海は一度汚されたら戻らない」。漁師は厳しい表情で話した。
1954年、米国が水爆実験を行ったビキニ環礁沖で操業中だった第5福竜丸は、放射能灰をもろに被り、乗組員23人が被曝した。広島、長崎に続きまたも日本人が核の犠牲になったのである。人類が核兵器の被害に巻き込まれたことにより、国際社会に核兵器廃絶の世論が巻き起こった。
反核世論をかわすため、米国を中心とした原子力マフィアは「核の平和利用」を口走るようになる。それが原発だった。核を温存するのが狙いだった。米国は第5福竜丸の被曝を逆手にとって原発を日本に押し付けたのである。
「焼津には核アレルギーが根強くある」。上述の漁師はいみじくも語った。
再稼働反対の現場では数少ないが乳飲み児を抱いた母親を必ずと言ってよいほど見かける。
「中学校の時、体育の女性教師が涙ながらに原発反対を訴えていたのが忘れられない。静岡では8月末から瓦礫の本焼却が始まるのでモヤモヤしていた。それが参加するきっかけになった」。静岡市在住の母親は緊張した面持ちで「脱原発」をアピールしながら繁華街を歩いた。
「静岡は浜岡(原発)と第5福竜丸(事件)があるから重いんですよ」。『再稼働反対アクション@静岡』を呼びかけた男性(50代・団体職員)の言葉が象徴的だった。
拙ジャーナルでは、それぞれの地域に根差した反核、反原発感情を定期的に伝えていく。
《文・田中龍作 / 諏訪京》
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