【全国に飛び火する金曜集会】 関電京都支店包囲 「電気は余っとるえ~」

左端の似顔絵は孫たち。女性が自分で描いた。悲しそうな目が印象的だった。(24日夕、関電京都支店前。写真:諏訪撮影)

左端の似顔絵は孫たち。女性が自分で描いた。悲しそうな目が印象的だった。(24日夕、関電京都支店前。写真:諏訪撮影)

 都人の原発再稼働反対集会は、「はんなり」とした雰囲気だろうと勝手に想像していた。ところが実際はその逆だった。トラメガや鳴り物を手にした集会参加者が、勤務を終えて通用門から出てくる関電社員に「関電うそつき」「電気は足りている」と浴びせるのだ。本来柔らかいはずの京都弁のイントネーションが、逆に尖がって聞こえる。

 京都の金曜集会が始まったのは、関電大飯原発3、4号機が再起動する直前の6月29日だった。脱原発グループのメーリングリスト上で「官邸前の運動に連帯したい」という機運が高まっていたところに大飯原発が再稼働し、危機感が背中を押したのである。

 日本で唯一つ原発を動かしている関西電力への京都市民の不信感は根強い。活断層が直下を走る大飯原発でひと度事故が起きれば、びわ湖の水が汚染される。びわ湖の水に頼りきってきた関西1600万住民の生活はおしまいだ。

 金曜集会は関電京都支店を包囲する形で毎週行われる。京都三山に陽が落ち、名物の油照りも鳴りを潜めかける頃、仕事を終えたサラリーマンや夕食の支度を済ませた主婦らが、三々五々訪れる。始まって1時間も経つと参加者は200人を超え、関電を包囲する形となる。

 真っ白のタイベックスに身を包んでいるのは、京都市内の鍼灸師(男性・40歳=写真下段)だ。「放射能の恐ろしさを見た目で表したかった。大飯(原発)で事故が起きたら、京都の街中をこんな恰好で歩かなくてはならなくなるということをアピールしたい」。

 来週にも国会で採決されそうな原子力規制委員会の人事については次のように答えた。「原子力村の名誉村長のような人を委員長にすれば規制どころか保護することになる」。

 男性は大飯原発に対して並々ならぬ危機感を抱いていた。「老朽化し、下を活断層が走る原発は時限核爆弾だ。すぐにでも止めてもらいたい」。

黄色い風船を持った市民たちで包囲された関電京都支店。(写真:田中撮影)

黄色い風船を持った市民たちで包囲された関電京都支店。(写真:田中撮影)

 左京区に住む女性(40代)も悲壮な面持ちだ。「びわ湖の水が汚染されたら生きてゆけない。実家は福井市内。家族も親戚も福井にいる。福井にいる友人の息子は原発の下請け労働者で、最近、福島に送り込まれた。友人は泣いていた」。

 びわ湖畔の大津市から足を運んだ女性(60代・写真上段)は切々と訴えた―

 「2歳、5歳、13歳の孫がいる。孫たちに代わって“びわ湖の水を守れ”と言いに来た。規制できない人を(原子力規制委員会の)委員長にしてしまいそうだ。孫たちを守れる人が日本にもいるはず。誠実な人が委員長になるべき」。

 全国津々浦々、原発立地県でない地域にも広がる再稼働反対の強烈な意志表示。狭くて地震が多発する日本列島に50数基も原発を作ってしまったことに対する危機感の表れだ。「子や孫の未来を守りたい」。人としてごく自然な感情がある限り、金曜集会は日本のあちこちで開かれる。

《文・田中龍作 / 諏訪京》

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今月は沖縄、松山、大阪などに出張取材を重ねたため出費がかさんでいます。『田中龍作ジャーナル』は読者のご支援により維持されています。

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