国家防御罪で刑事訴追されたビルマ民主化運動の指導者アウン・サン・スー・チーさんの初公判となる18日、世界中のビルマ人が抗議活動を繰り広げた。
スー・チーさんの罪状は、米国籍の男性が自宅に2日間滞在したことを当局に届けなかったというもの。男性はスー・チーさん宅の裏庭に面した湖を泳いで侵入し、再び泳いで返ろうとしたところを軍事政権に見つかり逮捕された。実に不思議で不自然な事件だ。
スー・チーさんの自宅軟禁は今月27日で切れる。来年に予定されている総選挙にスー・チーさんを立候補させたくない軍事政権としては格好の事件だった。スー・チーさんは14日、武装警察官によってヤンゴン市内の自宅からインセン刑務所に移送された。「ビルマ国民民主連盟(NLD)」によれば、現在は同刑務所近くの一軒屋に拘留されている。
軍事政権のミャンマー(ビルマ)では、初公判で即有罪判決が当たり前のようにある。有罪となれば3~5年の禁固となる。
「スー・チーさんをただちに釈放せよ」。18日昼、在日ビルマ人約300人が、東京・北品川のミャンマー大使館前で抗議の声を挙げた。
在日ビルマ人の多くは飲食店で働きながら生計を立てているが、この日は仕事は休んで抗議活動に駆けつけた。
日本に逃れてきて15年が経つ女性は「スー・チーさんが来年の選挙に邪魔だから訴追したことは子供にでも分かる。軍事政権は本当に許せない。スー・チーさんの健康が気にかかる。日本政府は黙っていないで、『すぐに釈放するように』軍事政権に圧力をかけるべき」と憤慨する。
ビルマ日本事務所のマウン・ミンニョウ事務局長はインターホン越しに、ミャンマー大使館に訴えたーー「あなたちの政権は私たちが望んでいる政権ではない。スー・チーさんをはじめとするすべての政治犯を釈放して下さい。民主国家を作らなければ、あなた達もあなた達の子供も未来はない」。
マウン事務局長は話し終えるとスー・チーさん拘束に抗議するNLDの声明文を大使館のポストに投函した。
「軍事政権は不当に拘束しているアウン・サン・スー・チー氏を釈放しろ。Free, Aung San Suu Kyi」。怒気を充満させた300人のシュプレヒコールが大使館前に響き渡った。