「スーチーさんを檻から釈放せよ」 在日ビルマ人がデモ

 国家防御罪に問われているビルマ(ミャンマー)民主化運動の指導者アウン・サン・スー・チーさんに、軍事政権は今週中にも有罪判決を下すものと予想される。危機感を強める在日ビルマ人たちが24日、「檻の中のスー・チーさん」を先頭に都内をデモ行進した。
 スー・チーさんの罪状は、自宅裏の湖から泳いで侵入してきた米国人男性を滞在させたにもかかわらず当局に報告しなかった、というもの。ビルマでは外国人を宿泊させる場合、当局に知らせることが法律で義務付けられている。
 軍事政権につけ入られることを避けたいスー・チー邸は男性を追い返そうとした。だが男性は「泳げない」「足がつった」などと訳の分からないことを口走って居座り、今回の事件に発展した。軍事政権によるデッチ上げとの見方が有力だ。22日、開かれた初公判でスー・チーさんは「私はいかなる法をも犯していない」と述べて無罪を主張している。
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在日ビルマ人女性がスー・チーさんに扮して檻に入った(東京・恵比寿で。写真=筆者)

 デモ行進に先立ち東京・恵比寿の公園で集会が開かれ、軍事政権と米国人男性が結託していることを茶化したパフォーマンスが披露された。
 シュノーケルと足ヒレをつけた男性が軍事政権と事前に打ち合わせて、湖を泳ぐ。スー・チーさんに会ったところでショットガンを持った兵士が現れて男性を逮捕する――といった内容だ。パフォーマンスとはいえ、真に迫るものがあった。
 スー・チーさんに扮したのはプィン・ピュ・ミンさん(27歳)。1千人を超す僧侶が身柄を拘束された07年の民主化運動弾圧事件で、軍事政権から逃れて日本に来た。
 
 「軍事政権は自分たちのことしか考えていない。国民はどうなってもいい。日本政府はどうして何もやってくれないのですか?スー・チーさんが出獄したら(軟禁状態を解かれたら)、私は自分の国に帰れる。父と母が待っている」。若い頃のスー・チーさんを彷彿とさせる容貌のミンさんは、筆者に切々と訴えた。
 ミンさんは檻に入ったまま、デモ行進の先頭に立った。スー・チーさんが、世界で唯一人、檻に入れられたノーベル平和賞受賞者であることを日本の市民にアピールするためだ。「スー・チーさんの檻」に800人余りの在日ビルマ人が続いた。
 来年に予定されている総選挙にスー・チーさんを立候補させたくない軍事政権は、ありとあらゆる理由をつけてスー・チーさんに有罪判決を言い渡すものと見られている。
 「ミャンマー軍事政権は不当に拘束しているアウン・サン・スー・チー氏を釈放しろ!」。母国の民主化を願う在日ビルマ人たちのシュプレヒコールは、これまで以上に危機感がこもっていた。

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