【エルサレム発】人命と平和のジレンマ

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シャリート兵士の母アビバさん(左)を励ます女性はバスで3時間かけて来た(首相官邸前=エルサレム=写真:筆者撮影)

 イスラエル軍のギラード・シャリート兵士(23才)が作戦中、ハマスに誘拐されて4年が経つ。シャリート兵士は06年6月、ガザとの境界からわずか数百メートルの地点で搭乗していた戦車が武装勢力の襲撃に遭い拉致された。

 ハマスはイスラエル政府に対してシャリート兵士の身柄と引き換えにイスエルの刑務所で囚人となっているハマスのメンバー1,000人の釈放を求めている。

 イスラエル国民の関心は高い。エルサレムの首相官邸前では、シャリート兵士の奪還を求める市民たちが2年前からテントを張って署名活動などを行っている。同兵士の両親も連日、テントに詰めて息子の奪還を呼びかける。4年余りも息子の帰りを待ち続ける母親のアビバさんの表情からは憔悴の色が見て取れた。

 署名はこれまでに50万筆集まった。筆者が訪ねた日は、イスラエル北部の工業都市ハイファからバスで3時間もかけて来た団体もあった。署名に訪れる人はひきもきらない状態だ。

 だが、イスラエル政府にとってはジレンマだ。祖国を防衛してきた軍人の命も大事だが、テロリストを再び放てば大勢の国民の生命が危険にさらされるからだ。「捕虜事件」はイスラエル政府のノドに刺さった大きな骨とも言える。

 シャリート兵士を少年の頃から知る同郷の男性は溜息まじりに次のように語った。「シャリートを取り返したいのは山々だが『囚人1,000人と交換しろ』と簡単に言えない。政府へのプレッシャーが高まれば喜ぶのはハマスだからだ」。

 捕虜が長期間に渡って拘束されているケースでは、国際法に基づいて国際赤十字が「捕虜の健康診断の実施」を求めるのだが、国際赤十字は今回の事件で乗り出していない。イスラエルにとって「負のダブルスタンダード」が重くのしかかる。

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田中は15日午前(日本時間:同日夕)、ガザに入る予定です。

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