「東電情報隠し」の裏で進行する放射能汚染

記者団に詰問される東電・広報担当者=正面=。(15日、東京電力本店。写真:筆者撮影)

記者団に詰問される東電・広報担当者=正面=。(15日、東京電力本店。写真:筆者撮影)

 東電の記者会見は、聞けば聞くほど「情報隠し」の疑念が募る。枝野官房長官がすでに記者会見で公表している事柄であるにもかかわらず、広報担当者は「確認できていない」と答える。

 枝野官房長官が東電側とすり合わせを十分にしないまま公表していると仮定しても、東電の発表は遅い。

 記者団のイライラも募る。某社の記者が声を荒げた。「(大気中に漏れ出している)放射線濃度は人体に影響があると官房長官が発表したのは1時間半前。それなのに『まだ分かりません』は遺憾です。情報を出して下さい」。

 広報担当者は「情報が古くて申しわけございません」と答えた。筆者はピンとくるものがあり、彼に質した。

 「現場に一番近い所にいるのが東電さんですよ。なのに官房長官より情報が遅いというのはおかしいではないですか?」。

 「私どもが対策室から情報をもらって、こちらに来て皆さん(記者団)とお話しさせて頂いている間の新しい情報は限られている」。

 「限られているということは調整しているということですね?」

 東電は「今回は広報するのはここまで」と決めて記者会見に臨んでいるのだろう。警察の発表がそうだ。ただ警察の場合は「捜査に支障を来すので、ここまでしか広報しない」という理由からだ。

 東電の場合は原発事故をできるだけ小さく見せよう、隠せるところまで隠そう、という意図が透けて見える。

 【「奥さんだけでも西日本に避難させとけ」】

 東電が情報を小出しにし、政府は東電から実相を引き出せない。その裏で事態は想像以上に悪化している。

 フリーランスの島田健弘記者のもとに知人の自衛官(30代)からメールが届いた。福島県で復旧作業に当たっているものと見られる。

 自衛官によれば、メルトダウンは14日から始まっているとのことだ。化学防護の部隊が踏みとどまって頑張っているが、爆発を遅らせるのが関の山という。

 被災地は死体だらけで酷い臭いだそうだ。自衛官は島田氏に「(東京にいる)奥さんだけでも西日本に避難させとけ。逃げ遅れた被災者は悲惨だぞ」と忠告していた、という。

 原発4機が連続あるいは同時に爆発を起こす。対策は後手に回る。筆者は決して煽っているわけではない。

 「東電はじめ関係者の皆さんには原子炉への注水といったことについて、危険を顧みず、今も全力を挙げて取り組んでいただいております」(菅首相15日、国民に向けてのメッセージ)。 被災地で進行している事態は、能天気宰相が言うような幼稚な感情論で済ますことができないところまで来ているのである。


田中龍作の取材活動は読者に支えられています。

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