「東電情報隠し」の裏で進行する放射能汚染 ~その4~

「原発反対」を訴える活動家。警察官の方がはるかに多い。警備の厳重さを物語る。(20日、東京電力本店前。写真:筆者撮影)

「原発反対」を訴える活動家。警察官の方がはるかに多い。警備の厳重さを物語る。(20日、東京電力本店前。写真:筆者撮影)

 ニッチもサッチも行かないとはこのことである。20日、福島原発3号機の原子炉格納容器の圧力が高まっていることが分かり、東京電力は容器内の気体を放出させるために外部につながる弁を開放することを検討した。

 3号機はMOX燃料が使用されている。もし開弁すればプルトニウムを含んだ放射性物質が高濃度で大気中に撒き散らされる。圧力抑制室(サプレッションプール)に逃がして水を通し放射能濃度を薄める方法があるが、水が多過ぎてできない状態になっている。

 原子炉格納容器の圧力がそのまま上がり続ければ、高濃度放射能を外に排出するしかなかった。さもなければ格納容器が爆発することになる。

 格納容器内の圧力はほんのわずかに下がっただけだ。東京電力の広報担当者は筆者が「高止まっただけでしょ?」と聞くと「そうです」と認めた(20日午後の記者会見)。容器内の圧力は依然として高いのである。

 東電は圧力が高まった理由を「海水を注入したため」と答えた。炉の温度を下げるには海水を注入しなければならない。MOX燃料はウラン燃料より低い温度でも溶けるため、炉の温度を下げることは喫緊である。

 ところが炉の温度を下げるために海水を注入したことで原子炉容器の圧力は上がった。進むも退くもできないのだ。

 原発に詳しいジャーナリストは「圧力がこのまま自然に下がっていくとは考えにくい」と話す。圧力が再び上がるようなことになれば東電は「高濃度放射能を大気中に放出する」か、「爆発させる」かの選択を迫られる。

 政府は『予断を許さない状態』(枝野官房長官・20日午後の記者会見)などとあいまいな表現を使っている場合ではない。今すぐにでも避難区域を広げるべきだ。何事もなければ、また戻ってくればいいのだから。


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