「東電情報隠し」の裏で進行する放射能汚染 ~その5~

記者会見する武藤栄副社長。ノラリクラリと記者の質問をかわす。(22日夜、東京電力本店。写真:筆者撮影)

記者会見する武藤栄副社長。ノラリクラリと記者の質問をかわす。(22日夜、東京電力本店。写真:筆者撮影)

 枝野官房長官が廃炉に言及しても「申しあげる段階ではない」(21日記者会見)と交わす武藤栄・東京電力副社長は面妖な人物だった。

 記者団の質問をノラリクラリと交わしてやたらと話が長い。低音でよく聞き取れないのも記者泣かせだ。

 22日の記者会見では女性記者と次のようなやりとりがあった―

 「飲料水から赤ちゃんが飲めないほどの放射性物質が検出されている。どう受け止めているか?」

 「さまざまなことを考えてそうした基準が考えられるものと理解しているのでありまして、そうした基準に合わないものは出荷しないと定められている。いずれにしましても放射能のレベルは保守的な基準で定められている」

 意図的か聞き間違いか。武藤副社長は野菜と取り違えているのである。それにしても「放射能のレベルは保守的な基準」との認識には驚かされる。丁寧な言葉使いの下に当事者意識の薄さがありありと覗く。そこに見えるのは、人を思い遣ることを忘れた厚顔な老紳士だ。

 見かねた筆者が突っ込んだ。「彼女は飲み水について質問してるんですよ」。

 女性記者が質問し直した―
 「被災地の皆さんは飲み水の確保に苦労していて乳児のミルクに使えない。基準値云々ではなくて、そういった人たちにどう言ったお言葉をかけるのですか?」

 「全体を通して多くの方々にご迷惑をおかけして申しわけなく思っております。一刻も早く収束させることが重要であると考えております」。あげ足を取られることはないが、人間らしい温かみが全く感じられない答弁だ。

 2002年発覚した「事故隠し事件」で東電は告発されてもなお“記録にない”、“記憶にない”で誤魔化そうとした。武藤副社長は東電の社風が作り上げた人物であることは間違いないようだ。


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