電力会社 不安訴える母親にケンもホロロ

真っ赤なシャツにパーカッション。お祭り気分に湧く抗議集会だ。(14日、東電本店前。 写真:筆者撮影)

真っ赤なシャツにパーカッション。お祭り気分に湧く抗議集会だ。(14日、東電本店前。 写真:筆者撮影)

 
 全国各地に広がるウィークエンドの「脱原発運動」は、週を追うごとに勢いを増している。初夏の陽気となった14日、市民ら230人が東京電力本店と中部電力・東京支社前で抗議行動を繰り広げた。

 多くの参加者にとって、デモ・集会の類は今回の「脱原発」が初めてだ。鮮やかな原色の服を着、楽器を手にした人たちが集まった。カーニバルのノリだ。

 だがお祭りムードは一瞬にして破られた。代表数名が東電に「廃炉」などを求める要望書を手渡そうとしたところ、東電側は警備長を出して対応したのである。社員ではあるがガードマンの元締めに過ぎない。

 市民らは原発事故をめぐる要望書を持ってきたのである。原子力立地本部などの社員を出すのが筋ではないだろうか。警備長が対応したということは、「原発反対」を唱える人たちは警備対象者になるということである。東電の姿勢を象徴しているようだった。

 「会長を出せ」「清水(社長)を出せ」の怒声があがり、パーカッションが激しく打ち鳴らされた。

 埒のあかない東電を後に一行は中部電力・東京支社に移った。同支社は報道界の殿堂とも言える日本プレスセンターの5階にある。マスコミと電力業界の蜜月を物的に示すものとして興味深い。

「子供が安心できる未来を」、加藤総務課長(左)に訴える女性は都内在住だ。(14日、中部電力・東京支社前。 写真:筆者撮影)

「子供が安心できる未来を」、加藤総務課長(左)に訴える女性は都内在住だ。(14日、中部電力・東京支社前。 写真:筆者撮影)

 中部電力・東京支社は警備担当者ではなく総務の社員が対応した。加藤隆之総務課長だ。

 市民らは「浜岡原発の廃炉」などを求める要望書を手渡した。加藤総務課長は「防潮堤が完成する2年後には運転を再開する。廃炉にするつもりはない」。

 東電・最高幹部は「津波による電源喪失」がすべての事故原因であるかのように喧伝する。「防潮堤を高く強固にし、電源装置を高い所に置けば安全対策は万全」―東電、中部電力とも胸を張る。

 国民をペテンにかけるのもいい加減にしろと言いたい。苛酷事故は津波による電源喪失だけではないのだ(菅首相も電源喪失さえしなければ苛酷事故は防げると思い込んでいるが)。

 地震による揺れが激しければ制御棒が入らなくなる。チェルノブイリ事故のように制御不能となるのである。

 すぐ傍を活断層が走る浜岡に原子力発電所がある。超特大の時限爆弾を抱えているようなものだ。

 幼子を持つ母親や妊婦は関東圏にいても気が気でない。間もなく2歳になる子供を抱いた都内在住の女性(30代)は加藤総務課長の前に進み出て訴えた(写真)―「子供たちが安心して暮らせる未来を用意するのが大人の責任です」。女性は涙で声を詰まらせた。

 埼玉県に住む50代の女性は、妊娠6か月になる娘の写真パネルを加藤総務課長の前に突き出して言った。「安心して子供を産める日本にして下さい」。

 加藤課長は「安全対策に問題はない」とケンもホロロに繰り返すばかりだった。

 2人の女性に共通する言葉は「安心」だった。いま国民を不安のどん底に落とし入れているのが原発だ、といっても過言ではない。

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