2兆円の開発費をつぎ込みながら1ワットの電気も発電せず、毎年100億円もの予算を浪費しつづける「高速増殖炉もんじゅ」。ただの“ゴクつぶし”ならともかく、人類が作った最悪の猛毒といわれるプルトニウム(半減期2万4千年)を燃料にし、しょっちゅう事故を起こす危険このうえない存在だ。
4日、国会内で「もんじゅの廃炉を求める」対政府交渉が行われた(主催:脱原発政策実現ネットワーク)。政府からは財務省主計局、日本原子力研究開発機構、文科省核燃料サイクル室から計4人が出席した。
主催者側が問題にしたのは大きく2つ。「昨年8月に発生した炉内中継装置の落下事故」と「福島の事故を受けてなお『もんじゅ』に予算をつけるのか」だ。
炉内中継装置は炉心燃料の交換時に燃料を仮置きする筒で直径46㎝、長さ12m、重さ3・3トンもある巨大な装置だ。設計ミスで落下し、衝撃で原子炉容器も破損したと見られている。
日本原子力研究開発機構・敦賀本部技術開発センターの小林孝良副所長によれば、装置の引き上げに9億円を要した。新しい炉内中継装置は4億円でメーカー(東芝)に発注した。平山誠参院議員(無所属)がこれを追及した――
「欠陥車のリコールは自動車メーカーが費用を持つのが世界の常識。どうして『もんじゅ』は、こちらが持つのか?東芝が払うべきではないか?代金はもう払ったのか?」
小林副所長の答弁がふるっていた。「(代金の)支払いは納品されてからです」。“まだ払ってないよ”と言いたいのだろうが、発注しているのだからいずれ払わなくてはならない。国民の税金で賄われるのである。
社民党の福島瑞穂党首が畳みかけた――
「原子炉容器が傷ついているのに炉内中継装置を入れてどうするのか?」
小林副所長のコメントは答になっていなかった。「原子炉容器の中を確認するということは決めている…」
これほどまでズサンな「もんじゅ」に果たして財務省が予算をつけるのだろうか?今まさに来年度の概算要求たけなわである。主催者側は財務省の棚瀬誠主計官に迫った。「無駄な経費は削って被災者の手当てに回すべきだ…」
棚瀬主計官は「歳出の見直しは不断に進めているところであり、原子力施設の(予算)見直しは適切に行う」。官僚答弁の見本のような答だった。
「わからない」、会場からは怒号が飛んだ。
無駄をなくすと言っていた民主党に政権交代したにもかかわらず、「もんじゅ」にかかる予算が増えていることが平山誠参院議員の追及で明らかになっている(5月23日参院決算委員会)。
壊れた容器に新しい装置を入れても、まともに動かないことは中学生でも分かる理屈だ。欠陥商品をつかまされて事故が起きたのにもかかわらず、利用者(日本原子力研究開発機構=税金)が事故処理の経費と新部品の購入費を払う。
政界も霞が関も無駄使いと知っていながら改めようともしない。政治家は選挙を、役人は天下りを何よりも優先するのである。原子力村の闇の深さには呆然とするばかりだ。
これでは、廃炉どころか、予算の削減もおぼつかない。主催者の一人が呟いた。「泥棒に追い銭とはこのことだ」。