脱原発・銀座デモ 平成の“ええじゃないか”

奇抜なスタイルで「原発反対」を訴える参加者。(6日夕、内幸町。写真:筆者撮影)

奇抜なスタイルで「原発反対」を訴える参加者。(6日夕、内幸町。写真:筆者撮影)


 打楽器が激しく打ち鳴らされ、ド派手な衣装の参加者たちが踊りながらパレードする。まるでリオのカーニバルを思わせるノリだ。
 「4・10高円寺」「6・11新宿」で1万人を超す人々を集めた『素人の乱』主催の脱原発デモが6日、銀座・有楽町界隈で繰り広げられた。

 20代、30代の若い世代が圧倒的に多い。隣近所で連れ合って来たという人たちも目につく。葛飾区の同じアパートに住むグループに話を聞いた――

 30代の父親(大工)は「妻と2人の子供(ゼロ歳、2歳)を熊本に疎開させた。縁もゆかりもない民家を借りたので貯金を全て使い果たした」という。別の家族の母親は「小学校5年生の息子を茨城での臨海学校に行かせなかった」、「給食の牛乳はボイコットしているので水筒を持たせている」と語る。

 都内の大学に通う女子学生は次のように話す。「今、原発をなくしてしまわないと、将来また事故が起きる。子供を産む身であることを考えると東京に住むのも怖い」。

 筆者は「就職の面接で原発について聞かれたら何と答えるか?」と少し意地悪な質問をした。彼女は「『原発はよくない、危険だから』と答える」とにべもない。

 浴衣姿にマスクを着けた女性は2児(小2、小5)の母だ。「新米が出る秋以降が心配。福島産の野菜を給食に出すというのなら、先ず都庁の食堂で使えと言いたい。子供の低線量被曝が心配。政府は閾(しきい)値をどんどん上げている。先進国に住んでいると思っていた自分が恥ずかしい」。

「ええじゃないか」のムシロ旗が日比谷公園に翻った。 (筆者撮影)

「ええじゃないか」のムシロ旗が日比谷公園に翻った。 (筆者撮影)


 デモ参加者に共通するのは行政への不信と子供の将来に対する不安だ。額に汗して生活を支える普通の人たちが、「お上」に異を唱えてデモに参加したのである。デモの隊列には「ええじゃないか」の墨痕鮮やかなムシロ旗が翻った。

 政情不安、地震津波の発生、コレラの流行…。「ええじゃないか」は人心が揺れに揺れていた幕末に発生した民衆のデモンストレーションだ。あまりにも今と世情が似ていないだろうか。
 
 怒りの表明に敏感な警察は厳重な警戒態勢を敷いた。警官隊は蟻の這い出る隙間もないほどにデモ隊を取り巻いた。

 「こちらは丸の内警察署である。5列行進は認めない。もっと左側に寄りなさい。さもなければ検挙する」。警察は指揮車から警告を重ねた。東電すぐそばのJRガード下ではデモ隊と激しく揉みあった。警察の方で仕掛けたとの目撃情報もある。

 だが参加者たちは警察の取締まりをものともしない。「原発反対、ええじゃないか」の掛け声に身を躍らせながら夕暮れの都心を練り歩いた。江戸幕府は「ええじゃないか」と共に崩れ去ったのだが、原発推進で半世紀余り続いた日本政府はさて・・・。

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