「タンタウィ(軍最高評議会議長)はアメリカのスパイだ。イスラエルに住んで下さい。エジプト(の富)は泥棒から盗まれた…」。タハリール広場に響いているのは、13~14歳の少女の黄色い叫び声だ。
43歳の男性は似たような趣旨のプラカードを持って広場を練り歩く― 「誰が大統領になろうと気にしません。大事なのは100%エジプト人のために尽くすことです。アメリカのスパイにならないことです。ムバラクはアメリカのスパイだった」。
アメリカに国を売ることへの反発は、老若男女を問わずあるようだ。アメリカからエジプトへの資金援助は、年間20億ドル、このうちエジプト軍への援助が13億ドルを占める。アメリカからの援助はムバラク政権になって本格化した。
エジプト軍はアメリカからの援助金で米国製の兵器を購入する。残りは人件費などにあて軍を維持するのである。軍は独裁者の体制を守るための道具となってきた。民衆は軍によって自由を奪われてきたのである。エジプト人の憎しみが、軍事援助を続けるアメリカに向かう理由のひとつだ。
28日から投票が始まる議会選挙では、欧米支配からの脱却を掲げるムスリム同胞団の系列政党が大躍進するものと予想されている。そうなれば、アメリカの中東での影響力はさらに弱まる。「アラブの春」が、民主主義の本場を自負するアメリカへの強烈なブローとなるだろう。