ムバラク独裁政権の崩壊後、初めてとなるエジプト議会(下院に相当・定数508議席)選挙が28日(現地時間)から始まった。
学生をはじめ若者は、選挙は軍の特権を追認することになるとして選挙の延期を強く求めた。10日前からタハリール広場に集結、警察隊と衝突し、これまでに41人が死亡している。
政権を掌握する軍は危機感を強めた。タンタウィ軍最高評議会議長は選挙妨害に対して「重大な結果を招く」として武力鎮圧も辞さない姿勢を示した。現時点(28日、午後3時)では、大きな混乱もなく投票は進んでいる。
オールドカイロでの投票風景を取材した。投票所は男女別々だ。日本のように学校が投票所にあてられていた。
軍と警察が警戒態勢を敷くなか、有権者が長い列を作った。選挙後召集される議会は新憲法を起草する委員会の中心となる。軍の特権が温存される恐れもあるとはいえ、選挙にかける有権者の期待が感じられた。
筆者は出口調査ならぬ「入口調査」を実施した。男性有権者のほとんどは「ムスリム同胞団(※)」系列の政党「自由・正義党」に投票すると答えた。理由は「長い間、一般の人のために尽くしてきた。ワイロを要求しないから」とほぼ全員が答えた。
一方、女性有権者のうちムスリム同胞団系列の「自由・正義党」に投票すると答えたのは3分の1にとどまった。
スカーフを頭につけているものの、サングラスをかけ欧米風のファッションを身にまとった女性は「違う部分もある」と答え、「ムスリム同胞団」系列への投票を暗に否定した。露出を限局する服装に象徴されるイスラムの厳しい戒律を嫌う傾向は、中東の女性の間に増えつつあるようだ。
選挙はムスリム同胞団系列の「自由・正義党」の躍進が予想されている。そうなると米国と米国から援助を受ける軍にとっては厄介なことになり、エジプトは不穏な情勢を孕むことになる。
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(※)ムスリム同胞団
エジプト最大のイスラム教スンニ派宗教・社会運動組織。穏健なイスラム原理主義と互助の精神を掲げ中東各国にも影響を与える。チュニジアではジャスミン革命後の議会選挙でイスラム同胞団系政党が圧勝している。