25日、今回のタハリール広場占拠後、初めての金曜礼拝が行われた。前回(1月~2月)の市民革命の際、第1回目の金曜礼拝で数十人の若者が治安警察によって射殺されている。
権力者と取巻きだけが暴利を貪るのは「神の下の平等」を定めたイスラムの教えに反する。独裁政権への反発が高まる金曜礼拝は、政権にとって目障りな行事なのである。今回の蜂起でも38人がすでに死亡している。
この日も、緊迫した金曜礼拝となることが予想された。礼拝は12時頃から始まるのにもかかわらず、タハリール広場には朝から民衆が押し寄せた。礼拝の前ぶれとなるアッザーンが流れる頃、広場は身動きもとれないほどの人で埋め尽くされた。1万人は軽く超えているだろう。
高僧が説法を始めた。マイクのボリュームは一杯だ。「我々は殉教者のためにも今の体制を終焉させなければならない。タンタウィ(軍最高評議会議長)らのおかげで我々はまともな生活ができない。体制を握る人々はずっと働いていない。彼らを裁判所に送って罪人と同じ扱いにしなければならない…(後略)」。
20分間ほどの説法が終わると、民衆はメッカの方角に向かって祈りを捧げた。「アラーアクバル(神は偉大なり)」と唱えながら頭を地面スレスレにつけるイスラム独特の礼法である。1万人を超える人々の衣擦れの音が、厳粛に響いた。
左足に分厚く包帯を巻いて礼拝に参加しているのは、シャバン・アブアジズさん(56歳・タクシー運転手)だ。警察から棒で打たれ足を負傷した。月収は1千エジプト・ポンド(約1万3千円)。「収入が少なくて生活が厳しい。タンタウィは一般市民を殺してもいいと思っている。早く刑務所に送るべきだ」。
「私を千回殺して下さい。それでもここに居続けます」と書いたプラカードを掲げる青年の傍を「我々は死んでもデモを続けるぞ」と叫ぶデモ隊が通る。
軍も警察も、この日の金曜礼拝には姿を現さなかった。