「東電による一方的な電気料金の値上げは納得がいかない」として埼玉県の医師が18日、東電の営業担当者にメディアの前で理由を質した。「値上げ後の新料金でなければ、電力供給の契約を結ばない」とする東電の独占体質が露わになった。
東電は、さいたま支社第一営業グループの小澤孝雄マネージャーらを医師のもとに派遣した。医師には弁護士が付き添った。
山崎利彦医師が経営する「山崎外科泌尿器科診療所」は6,000V(事業用高圧)の「自由契約」利用者だ。1か月に7,237kwhの電力を使い14万6,843円の料金を支払う(今年3月)。
2月、東電さいたま支社から山崎診療所に「新しい電気需給契約についてのお願い」と題する文書が郵送された。山崎医師はその郵便物を見ていない。
電気需給約款により、東電と自由化部門利用者の契約は1年毎。山崎診療所は3月31日で旧料金での契約が終了する。
東電の小澤マネージャーによれば「山崎診療所への請求は4月1日からストップしたまま」となっている。契約のない状態なのだ。山崎医師は払おうにも払えない。
にもかかわらず電力は供給されている。山崎医師の弁護士が「契約がないのだったら何に基づいて電力は供給されているのか?」。
東電側は「難しい(質問)ですね…」と答えなかった。
弁護士が「(3月31日までの)旧料金で受け取ってはくれないのか」と質すと、東電側は「契約更新が大前提」と答えた。値上げ後の新料金でなければ受け付けない、という姿勢の表れだ。
電力の供給停止が頭をよぎる。山崎医師は「ある日をもって東電が契約をするのを止める(電気の供給を止める)、ということにはならないでしょうか?」。
東電側は「交渉を継続しながら(電力の)供給を続けたい」と答え、電力を止めるつもりはないことを明らかにした。
山崎医師側は「払わないと言っているのではない。値上げの論拠を書面で示してほしい」と言った。だが東電側は「原発事故により…」と口頭で説明するだけだった。
東電の小澤マネージャーによれば、山崎診療所のような契約形態は、東電管内で21~22万事業所にのぼる。
小澤氏は「うち90%が(値上げ後の料金)で契約を結んだ」と説明する。真偽は確かめようもないが。
21~22万事業所が山崎医師のように新契約を結んでいなかったら、今ごろ東電はどのような対応をしているだろうか。
東電は被害者への補償や廃炉作業などで費用負担がかさむ。倒産させず国有化しているため、費用負担は国費で賄われる。我々の血税によってだ。
値上げは今後も断続的に続く可能性が高い。利用者はたまったものではない。簡単に値上げさせないためにも、従順に契約してしまうことは控える必要がある。交渉が続いている間は、電力が供給されるのだから心配は要らない。
「納得がいくまで毎日でも質問を繰り出す」。山崎医師は戦う姿勢を崩していない。
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