福島原発事故により生じた放射能濃度8,000ベクレル/kg超の指定廃棄物(汚泥など)。その最終処分場が特措法に基づき持ち込まれようとしている、栃木県矢板市と茨城県高萩市の住民がきょう、国に対して白紙撤回を求める集会を日比谷公園で開き、環境省と国会に向けてデモ行進した。
あまりにも地元をないがしろにした決定だった。「おたくの市のどこそこが最終処分場に決まりましたよ」と何の前ぶれもなく公表し、翌日、環境副大臣が地元市役所を訪問してそれを伝えたのである。
“国有林だから文句を言われる筋合いはない” と環境省はタカを括っていたのだろうか。
不意打ちに地元は驚き、そして怒る。矢板市議会、高萩市議会とも即刻、全会一致で白紙撤回を求める決議をあげた。両市の市議会議員全員がきょうのデモ集会に参加したことからも、地元の憤りが伝わってくる。
矢板市のある市議会議員は「(地元に報告する)前日に発表するような国策はない」と憤り、「自民党政権になったら新たな行動を起こす」と決意を示した。
矢板市に持ち込まれようとしている最終処分場はダムの近くだ。ダムは農業用水として使われる。上水道の取水場もこの近くだ。集会に参加していた農家に聞いた―
「田んぼだけじゃない、飲み水も汚染される。生活できなくなる」(女性・60代)
「(環境省は)常識外れ。(ダムは)命の水源だから絶対許せない」(男性・50代)
集会場となった日比谷公園の右手には環境省の入った政府合同庁舎がそびえ立つ。矢板市民同盟の小野崎俊行会長のスピーチが事態をよく表している――「(あれが)私たちを苦しめている環境省が入っているビルです。上から目線だと思いませんか?」
小野崎会長は来週にも政権復帰する自民党に釘を刺すことも忘れなかった。「自民党は約束を守って下さい。(選挙期間中)地元公民館で『政権を取ったら白紙撤回する』と言ったじゃないですか」。
この後、栃木県選出の渡辺喜美・みんなの党代表があいさつに立ち、経緯を明かした。矢板市と高萩市に最終処分場を持っていくことは自・公・民で決めていたというのだ。
住民が国の場当たり政策に翻弄されるケースは珍しくない。だが放射性廃棄物は、人々の健康と生活に悪影響を及ぼす。未来の子供たちに顔向けできないようなことをしてはならない。筆者は東電に引き取らせ福島原発の敷地に埋めさせることが、最も適切な解決方法だと考えている。