原発再稼働まっしぐらの安倍政権が登場したことで、経産省前の「脱原発テント」が試練を迎えている。
2011年9月、市民団体が中心になって経産省の敷地(国有地)に建てたテントは、2013年元旦で478日目となった。泊りも含めて24時間常駐でテントを守ってきた。
テントの中には「カセット・コンロ」「布団」「茶飲み道具」などが整理整頓されて並ぶ。昨年末には「仏壇」まで登場した。テント設立の頃からのメンバーが脳溢血で倒れ帰らぬ人となったのである。仏壇には好きだった酒が供えられていた。まるで家庭のような生活の匂いがする。
テントを訪れ再稼働に反対する署名に名を連ねた人は約2万5,000人に上る。
対する経産省はテントの周囲を鎖で巻き付け、「国有地立ち入り禁止」のプレートを7枚も8枚もぶら下げた。「早く出ていけ」と言わんばかりだ。エセ右翼の襲撃は、数えきれないほどの回数を数える。
昨年1月、枝野幸男経産相(当時)が期限を区切って退去を迫ったことがあった。だが期限を迎えた日、1,000人近い市民が駆け付けてテントを囲み守った。
「安全が確認できた原発から再稼働する」「原発の新設もありうる」としている安倍政権が、手を拱いたままテントの存続を許すとは考えにくい。
脱原発テント代表の渕上太郎さん(70歳)に今後の対応を聞いた――
「非暴力で徹底抗戦する。はい、そうですかと退去するわけにはいかない。もし明日潰されたら、次の(脱原発)闘争を考える」。60年安保の時代から国家権力と対峙してきた闘士らしい答が返ってきた。
昨年末の総選挙で脱原発勢力は議席を大幅に減らした。原発を止めてほしいと願う人々が、党派を超えて結束できる数少ない場所がテントだ。パブコメに象徴される「原発ゼロを望む8割の声」を安倍首相はどう聞くのだろうか。