今冬一番の冷え込みとなった今朝、東電本店前に座り込んでいる青年がいた。身を切るような風のなかカーディガンとTシャツ姿。薄着だ。
昨年の年の瀬に勝俣恒久・東電会長(当時)宅そばでハンストに挑んだ山口祐二郎さん(右翼活動家・27歳)は、今年、東電本店前を選んだ。「補償が終わっていないのに再稼働(しようと)するのはおかしい。再稼働するなら補償をしっかりしろ」との理由からだ。
山口青年は民族派右翼団体の「統一戦線義勇軍」を昨年脱退し、以後一人で活動している。
座り込みを始めたのは昨日(26日)午後3時から。東電正門側の歩道に行ったところ警察官に取り囲まれた。
「あっち(車道をはさんで反対側の歩道)に行け」
「公道だから自由だろ。僕と東電の問題だ」
17~18人からなる制服と私服のプレッシャーに山口青年といえども従わざるを得なかった。
昨年は水分さえ摂らない究極のハンストだったため、途中で体調を崩した。「轍は踏まじ」と今回は水分を摂り食事もする。ただ水には酒も含まれていた。
今日持ち込んだのは日本酒の4合びんと1リットルパック、バーボンのボトル1本。
昨夕、道路を挟んだ東電前の歩道で山口さんが飲んでいた。すると勤務を終えて新橋駅方面に向かう東電社員から声をかけられた。「だいぶ酔ってるね」。
山口さんが「飲んで行きませんか?」と誘ったが、東電社員は「立場があるから」と断った。警察官とも同じような掛け合いをした、という。
山口さんは10月頃、電力会社とつながりの深い自民党の甘利明議員(安倍内閣で経済再生担当相に就任)を神奈川の地元事務所と議員会館に訪ねた。自民党に政権が戻ると見越してのことだった。
当然のごとく甘利氏には会えなかった。秘書に「再稼働しないよう」申し入れた、という。単独乗り込む行動力は、いかにも右翼らしい。
昨年のハンストは奥さんが泣いて止めた。今年は「気をつけて」と言われただけだそうだ。
インタビューの間も北風が容赦なく薄着の山口青年から体温を奪う。「寒いっすねえ」。さすがの壮士も唇を震わせた。
その時、若い女性が心配そうな顔で近づいて来た。そして山口青年に寄り添った。奥さんだった。