ガザ援助船拿捕とイスラエルが恐れる核開発

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ガザの漁師ラジブさんは操業中、イスラエル艦艇に発砲され、冬の海を命からがら泳ぎきり岸にたどり着いた。イスラエル軍は漁師に紛れたハマスが武器・弾薬を密輸するとして警戒を強める【ガザ海岸で。写真:筆者撮影】

 パレスチナ自治区ガザへの援助物資を積んだ船がまたイスラエル軍に拿捕された。拿捕されたのはアイルランド船籍の「レイチェル・コリー号」(1,200トン)。同号は4日、医薬品、車椅子、セメントなど数百トンを積みガザに向かってガザに向かっていたところ、イスラエル沖30キロの地中海上で同国海軍に拘束された。

 ノーベル平和賞受賞者のメイリード・コリガン氏はじめ11人(アイルランド人5人+マレイシア人6人)の平和活動家が乗船する。活動家らが無抵抗を貫いたこともあり死傷者は出ていない。

「レイチェル・コリー」とは03年、イスラエル軍によるガザの民家取り壊しに抵抗し同軍の大型ブルドーザにひき殺された米国人女性の名である。

 先月末、地中海の公海上で援助船団が拿捕された際にはトルコ国籍の援助活動家など9人が、イスラエル軍の発砲を受けて死亡している。イスラエル政府は正当防衛を主張しているが、死亡した9人の遺体には計30発の弾丸が撃ち込まれていた。

 公海上で援助船に武力行使し死傷者を出したことに対して国際社会の非難が相次いでいるが、イスラエルは普段にも増して過剰防衛となった。

 先ずイスラエルの諜報機関が援助団体の中にトルコの武装組織「IHH」が紛れ込んでいる、と見ていたことがあった。「IHH」はハマスとつながる組織としてイスラエルは神経を尖らす。

 最大の理由はガザからのロケット弾攻撃だ。「ハマス」とハマスから分家した「イスラム聖戦」は、イスラエル南部に1年に2,000発以上もロケット弾を撃ち込む。筆者は撃つ方からも撃ち込まれる方からも話を聞き、現場を取材した。イスラエルはロケット弾の部品や発射台用のセメントが援助物資と共に持ち込まれると見ている。

 ロケット弾は飛距離を年々歳々伸ばしており、経済の中心都市テルアビブや首都エルサレムに届くようになるのは時間の問題である。イスラエルが警戒する最悪のシナリオは弾頭に核が搭載されることだ。

 イスラエルがイランの核開発を何としてでも阻止したがっているのは、このためとも言える。イランの「ヒズボラ」とガザのハマスは「提携関係」にあり、ハマスも核開発に手を染めていた。ガザで核開発に勤しんでいたパレスチナ人技術者が96年、イスラエルによって暗殺されたのである。核技術者の名はヤフヤ・ハヤーシュ。暗殺されて14年経った今なお、パレスチナの英雄だ。

 イスラエルは援助物資に武器・弾薬やそれに転用される物品が紛れ込む恐れがあるとして、ガザ封鎖を解く気配はない。陸路はほぼ完全にシャットアウトされており、ガザの人々はエジプトとの間に掘られた地下トンネルで日用雑貨や食糧、医薬品などを搬入し、細々と生活をつなぐ。海上も厳重な封鎖が続く。

 ガザの物資不足は深刻である。外界から遮断されるなか、人々が飢えや疾病で命を落とさないだろうか。気がかりだ。

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