首都圏の土壌汚染深刻 35地点でチェルノブイリと同レベル

プールのたまり水を採取する川根眞也さん。(埼玉県内の中学校で。写真:川根氏提供)

プールのたまり水を採取する川根眞也さん。(埼玉県内の中学校で。写真:川根氏提供)


 「放射能雲が関東地方を襲った3月15日夕方以降、さいたま市、川口市では(外の)空気さえ吸ってはいけなかった」。こう語るのは埼玉県の中学校で理科教師をつとめる川根眞也さんだ。風が福島から関東方面に吹いたこの日、川根さんは放射能測定器で両市の放射線量を計った。

 「安全だ、心配ない」を繰り返す行政の発表やテレビの報道とは裏腹に関東地方は、やはり高濃度の放射性物質で汚染されていた。市民有志からなる「放射能防御プロジェクト」が首都圏150か所の土壌を測定したところ、35地点でチェルノブイリ原発事故の「一時移住区域」「希望移住区域」「放射線管理区域」と同じレベルのセシウム(合算値)が検出された。

 調査方法は表面から5cm、砂場は15cmを採取した。期間は6月初旬から7月中旬。市民150人が1人1カ所ずつ身近な場所の土壌を採取し、すべての検体を横浜市内の民間調査機関に持ち込んだ。

 調査地点のうちセシウム汚染が最高値を記録したのは埼玉県三郷市早稲田植え込みで91万9,100Bq/㎡。チェルノブイリ事故の「一時移住区域」(移住・立ち退きの義務がある)と同じレベルだ。
 
 次に高かったのが千葉県松戸市紙敷の園庭で45万5,845Bq/㎡。チェルノブイリ事故の「希望移住区域」(移住の権利が認められる)に匹敵する。松戸市はじめ首都圏の5ヵ所でこの「希望移住区域」と同レベルのセシウム(合算値)が検出された。

 チェルノブイリ事故の際設けられた「放射線管理区域」に相当するのは東京文京区小石川4丁目の植え込みをはじめ29ヵ所。
 
 チェルノブイリ事故では行政が住民を大量に避難させたが、それでも後にガンや白血病が多発した。首都圏では行政が「避難」の二文字を発する様子はない。事故を起こした福島第一原発間近の福島市においてさえ、政府の現地対策本部は「国が安全と認めた所には強制はしないが留まっていただく」と冷淡なのである。

 調査に加わった横浜市内のある母親は嘆息しながら語る。「私たちが暮らす場所にこんなに放射能が降り積もっていたのかと驚く。子供は泥んこになって遊ぶので心配です」。

 「放射能防護プロジェクト」のメンバーである内科医の土井里紗さんは、被害の拡大を警戒する。「チェルノブイリは地産地消だったが、日本は流通が発達しているので(汚染食品が)一気に広がる。チェルノブイリ以上に体内被曝が広がる可能性がある」。

 防護プロジェクトでは菅直人首相と関東1都6県の知事宛てに、行政が「土壌調査」を行うことなどを要望した。

 ところが行政が調査をすると低い数値しか出ない。前出の川根眞也氏は中学校校庭の土壌を毎日のように調査している。だが行政は川根氏が校庭から離れた時にこっそりやって来て調査をする。発表される数値は最低値だ。川根氏は「行政の調査には必ず市民が立ち合う必要がある」と強調する。

 行政とマスコミの「安全情報」を鵜呑みにしたら取り返しのつかない被曝をする。飯舘村の悲劇はあらためて言うまでもない。「放射能防護プロジェクト」の今後の活動について川根氏は「先ず情報公開」と力を込めた。

全データは http://www.radiationdefense.jp/

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