「経団連は恥を知れ!」「電事連も恥を知れ!」…東京・大手町は財界の総本山にシュプレヒコールが響く。経団連会館の前には夕方6時過ぎから続々と人が集り始め、告知期間わずか1週間にも拘わらず1300人(主催者の首都圏反原発連合発表)が駆けつけた。
会館前を埋め尽くした参加者は、米倉会長らの部屋があると思われる経団連ビルの高層部を見上げながら声を上げた。怒り、悲しみ、落胆、切望が入り混じる。ドラム隊の強烈なリズムに乗った声は、刃物のように尖り会館に突き刺さった。
「経団連は政府に圧力を掛けて、原発ゼロ案を骨抜きにした。いつかは経団連に抗議行動を、と思っていたが、大新聞でもメジャーな問題になったので、今日行動することを決めた」。主催者の一人ミサオ・レッドウルフさんは話した。経団連会館の中には「電事連」も入居する。
経団連の米倉弘昌会長は、2030年代に原発ゼロを目指す新しいエネルギー政策に強く異議を唱えたと言われる。政府はこれに応えるかのように閣議決定を見送った。18日に米倉会長が抗議すると、翌日に閣議決定を見送るという腰砕けの早さには驚くばかりである。
経団連が狙うものは、簡単にまとめれば次の通りだ。『原発推進』は言うまでもないが、大企業の為に『法人税を引き下げる』。軍事産業も抱えるからか『武器輸出三原則の見直し』と『憲法改正』。事業の独占の為に『独占禁止法改正の反対』。そのために、『日本の経済政策に対する財界からの提言及び発言力の確保』を目的としている。つまり、自分たちの利益を確保するためには、露骨に政府に圧力を掛ける団体ということだ。
「呪」と書いたタンバリンを叩く仕事帰りの男性(川崎市在住)は、米倉会長を同じ高齢者として厳しく批判した。「私も65歳のおじいちゃん、米倉は75歳。いい歳こいて、見苦しい、あさましい、おぞましい。自分の子どもや孫に何て言うのか。原発麻薬依存症だから、早く病院へ連れて行った方が良い」
財界総理と呼ばれる、経団連会長。日本の民間人としては唯一、警察官から身辺警護を受けるということだ。現会長、米倉氏が原発事後直後に発した言葉は今も記憶に新しい。
「1000年に1度の津波に耐えているのは素晴らしいこと。原子力行政はもっと胸を張るべきだ」
さらに、東電を免責する発言も印象深い。
「東電は(大型の地震と津波による)被災者の側面もあり、政府が東電を加害者扱いばかりするのはいかがなものか」
鹿児島から仕事で上京していた女性(30代、フィットネスインストラクター)は、毎週金曜日に九州電力・鹿児島支店前で抗議行動を行っている。
「九州電力は政策決定権を持っていない。だが経団連は政策決定に圧力を掛けられる。だからここで声を上げたかった。推進の人たちに聞きたい。人の命をどのように思っているのか?お金があっても原発事後が起きたら、しょうがない状態になるんだ」。
「命より経済」、書き間違いではない。本当に「いのちよりけいざい」なのだ。
しかも彼らの言う「経済」とは、底上げのための経済ではなく、自分たちの豊かな生活と特権を守るための経済である。「原発の安全性なんぞ二の次」の人種なのだ。
「経済界の代表者面をするな!」…シュプレヒコールを米倉会長は『音』ではなく、『声』として聞いているだろうか。
(文・諏訪都)
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