【ウォール街占拠】 逮捕連行されながらも「我々は99%だ」と叫ぶ

「(警察は)恥を知れ」。青年が逮捕、連行されるとデモ参加者から非難の声があがった。=3日(現地時間)、ゴールドマン・サックスが入居するビルの玄関前。写真:筆者撮影=

「(警察は)恥を知れ」。青年が逮捕、連行されるとデモ参加者から非難の声があがった。=3日(現地時間)、ゴールドマン・サックスが入居するビルの玄関前。写真:筆者撮影=

 東電の玄関前で座り込みをしたら、こうなると思わせる光景だった。3日(現地時間)、富の強奪に抗議して米最大の投資銀行ゴールドマン・サックス前に座り込んだ市民10数人がニューヨーク市警に逮捕された。

 後ろ手で警察官に連行されながらも「我々は99%だ」と絶叫する青年。ゴールドマン・サックス社員はガラスの内側で薄ら笑いを浮かべながら逮捕劇を“観賞”した。わずか一握りの層が富を独占する世界の現実である。

 強欲資本主義を象徴する米金融業界は、自動車とITで他国に優位を奪われた米国に残された産業だ。実際には何も生産しないのにも関わらず、国内外の経済に君臨するのである。無理を重ねる金融支配の犠牲になったのが米国市民だった――

 すべての業界において利益が最優先されるようになった結果、庶民は病院にかかれなくなった。金融業界が仕掛けた住宅バブルが弾けたため家を失い、ホームレスとなった人は数えきれない。低賃金のため子供に満足な教育を受けさせることができない。自らには責任がないにもかかわらず、奈落に突き落とされ這い上がる機会さえ奪われているのである。

 『もう我慢ならない、このままでは野垂れ死ぬ』。強欲資本主義に抗議して庶民が座り込みを続けるウォール街のズコッティ・パークで市民集会が開かれた。

 高齢の女性は次のように語った―
「問題は歳入の問題ではなく、予算の問題だ。公共住宅が減らされ、低所得者層は家を失いホームレスになっている。夫は介護が必要で、保険もなく、子供たちが支払わなければならない。私たちを殺す気か?立ち上がり世界を変えるべきだ」

 2人の子を持つ母親:
「20年あまり勤務したニューヨーク市の学校を10月に解雇された。ブルームバーグ市長は公的教育機関の人員を削減し、ヘッジファンドが運営するイギリス流の私立学校を応援している。組合の設立も許されず職員は低い給料に甘んじなければならない」

 大学教授:
「市場化、商業主義、民営化により、金持ちがさらに金持ちになるようにしてしまった。全てが投機対象になった。これは企業による搾取だ。資本主義を制限することが革命的力になるだろう」

市民集会。大学教授、ホームレス、ワーキングマザー …。あらゆる階層が、金融支配がもたらした社会の非情さを訴えた。=同日、ズコッティ・パーク。写真:筆者撮影=

市民集会。大学教授、ホームレス、ワーキングマザー …。あらゆる階層が、金融支配がもたらした社会の非情さを訴えた。=同日、ズコッティ・パーク。写真:筆者撮影=

 集会の後、約100人の市民がゴールドマン・サックスに抗議のデモンストレーションに向かった。警察がぴったりとデモ隊を挟んだ。ほとんどは制服警察官で私服の刑事は数えるほど。白バイ隊が自動車道側を固めた。デモ参加者は警察官に向かってシュプレヒコールをあげた―

 “Who you serve, who you protect?”誰に仕え、誰を守っているんだ?東電前で厳重な警戒を敷く警察を見るたびに筆者が感じることだ。沿道からは歓声があがる一方で、冷ややかな視線も投げかけられた。

 ゴールドマン・サックスが入るビルの玄関前に着くや、10数人が座り込んだ。座り込むと瞬く間に警察官が取り囲んだ。警察は一人ずつゴボウ抜きにしていった。必死の抵抗を続けたが、力の前には勝てなかった。警察が玄関前から全員を排除するのに30分とかからなかった。

 「人間らしく生きたい」と抗議を続けるズコッティ・パークの占拠者を、果たして警察は排除にかかるのだろうか。

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