筆者が投宿するホテルはタハリール広場から南へ約1キロの所にある。午後ともなれば広場に入ろうとする人々が長蛇の列をなし、最後尾はホテルの前に届く。
仕事を終えた市民が広場に繰り込むのである。子供を抱いた夫婦、家族連れ、スーツ姿の男性、黒づくめの衣装で目だけ出した女性・・・エジプト中のありとあらゆる階層が広場に集い「ムバラクは去れ」「自由を」と叫ぶ。数十万人の合唱は地響きのようである。
寅さんのようなテキ屋はいないが露店も並ぶ。まるで縁日の賑わいだ。独裁者に楯ついているのだが、悲壮感のかけらもない。
広場はこうして連日、数十万人の人々で埋め尽くされる。ある男性(30代)は「軍は国民すべてを殺さない限り鎮圧できない」と力を込めた。