原発の是非を問うイタリアの国民投票は12、13日に実施されるが、成立は微妙な情勢だ。投票率が50%に達しないと無効になるためである。ベルルスコーニ首相がニラミを効かすメディア業界は、日本同様、「国民投票」を大きく取り上げない。こうしたことも影響している。
逆風のなか、福島第一原発の事故以降世界で初めてとなる「原発阻止・国民投票」を成功に導こうと運動を続けてきた団体がある。「原子力を止めるための投票委員会」(COMTITATO VOTA SI PER IL NUCLERE)だ。コーディネータを務めるマリア・マラーノさんに話を聞いた。
Q:福島の事故をどう受け止めているか?
A:技術が進んでいる日本であのような事故が起きた。他の国はどうなるのか? その意味ではチェルノブイリ以上にショックだった。
(日本政府が発出する)インフォメーションが足りない。一般の人は、放射能汚染がどこまで進行していて、どう危ないのか分からない。チェルノブイリ原発事故が起きた時のソ連みたいだ。
Q:原発に反対する理由は?
A:原子力は戦争のために作った武器。我々がコントロールできない怖いものだ。お湯のため電気のためにあんな恐ろしい物を作ってしまってよいのか。
Q:原発に対する国民の関心は高まっているか?
A:福島の事故以降、高まってきた(最高裁が国民投票を認める判決を言い渡したのは1月12日。「3・11」前のことである)。多くの人がオフィスに問い合わせをしてくるようになった。そして資料を取りに来る。福島の事故以降、あらゆる階層の人たちが「反原発」になったのを手ごたえとして感じる。
Q:ローマ法王が自然エネルギーへの転換を促し暗に原発を否定する発言をしたが?
A:法王はかつては反原発ではなかったが、福島の事故以降スタンスが変わったようだ。
ここでマリア・マラーノさんから逆質問を受けた。「日本人は原発をどう考えているのか?」
筆者:国民の過半数は原発に反対だが、政府とメディアが原発を推進したがっている。
マリアさん:イタリアと同じだ。
「世界同時反原発デー」となった6月11日は、国民投票の前日にあたる。イタリアでは国民投票の1日前から街頭での宣伝活動は禁止される。街には「反原発」のビラ一枚さえ見かけなかった。
イタリア政府は、「原発建設の禁止」を求める国民的盛り上がりを削ぐために投票日を12日としたのだろうか。勘繰りたくもなる。
「原子力を止めるための投票委員会」は、国民投票の結果が確定する13日午後、ローマの代表的観光名所である「真実の口」前広場で報告会を開く。