【取材の成否はコーディネーターで決まる】
知らない地で取材するには案内役が必要だ。あそこに行けばこんな光景があり、その話はあの人に聞くと分かる。こうしたアレンジをしてくれるのが現地コーディネーターだ。
優秀なコーディネーターはそのものズバリの所に連れて行ってくれる。核心をつく話をする人に合わせてくれる。取材は成功する。
ボンクラだとその逆になる。取材は失敗する。焦点が当ってないと感じたら心を鬼にして解任するしかない。
有能なコーディネーターは感謝の念と共に思い出に残る。10年前、アフガンで案内役を務めてくれたモハマディー氏はその筆頭だ。
北部同盟の中核となったマスード派の基地に連れて行ってくれたのだが、そこには内戦の真相があった――
新政府がソ連製や中国製の武器を回収に訪れていた。回収した兵器は米国が買い取り、代わりに米製の兵器を売りつけるというのである。
周辺国が内戦を煽り続け、戦争終結後は米国の兵器産業が儲ける構図である。学者がこね回す理屈ではなく、実態をリポートするのがジャーナリストだ。モハマディー氏はその現場を筆者に見せてくれたのである。
彼は豪胆かつ細心な男だった。地雷原を歩いた時のことだ。「俺の足跡以外は踏むなよ」と筆者に言いつけて先導してくれた。そうして無事目的地にたどり着くことができたのである。コーディネーターがモハマディー氏でなかったら筆者は片足を失っていたかもしれない。
今回のカイロ取材でお世話になったアブダッラー氏も秀逸だった。民衆にボコボコにされたり軍に拘束されたりしたジャーナリストは、たいがい北側からタハリール広場に入っている。到着初日に「北側はムバラク支持派が多いので危ないからね」と彼が教えてくれたから、筆者は最後まで無事に取材できたようなものだ。もっともアブダッラー氏が軍に拘束されてしまったが・・・
次の取材でも「優秀なコーディネーターに出会えますよう」。アラーの神に祈りつつ筆を置く。
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